利益(りやく)を感じる場

 

ayoshida
吉田 彰 (ヨシダアキラ)
久野塾
理事・アドバイザー ヤマト科学㈱ 常務執行役員

利益は御利益(ごりやく)と書くと(りやく)と読む事ができるが、利益と書くと、普段私たちは(りえき)と読む(りやく)は唐語読みで、「仏の恵み」が語源と言われる。要するに他人を益する事。他人の利益(りやく)を追求すると、結果として自身の利益(りえき)がついてくる、と云う事である。

2012年は私にとって40代最後の年。会社を退職し、コーチングスクールに通い「次のステップを」を模索した年。それが、私にとっては、本格的な最初の立ち止まりとなり、深く考える切っ掛けとなった年だった。それまでの私は、チャレンジ&イノベーションと高い目標にチャレンジする事を楽しんでいた。達成に近づくとさらに目標を上げる、まさにチャレンジマニア。そして周りの人も強制、と悪癖の塊のような行動をとっていた。ある人から、コーチングを受けてはと勧められた時も、「コーチング、はあ、なにそれ、精神論で目標達成する?」くらいの勢いで、お恥ずかしながらまさに悪癖の塊。その実体験が、今、なにかと役に立っていると思うことにしているが(笑)。

そんな私にとって、2012年は自己変革の入り口となった年。まずコーチングスクールに入り資格取得、クライアントにコーチングを実践していった、当初は稼ぐすべを見つけ安定させる事に必死で(りえき)の獲得にもがき・焦っていた時である。もがく中、自身では気づいて無かったが、久野塾に参加させてもらう、また、新しい友人との出会いや昔の同僚との再会、により、当時は気づいていなかったが、自身の行動・言動の中に「利他」的な考えが浸食してきたのだと思う。

この頃急に外資系企業のオファーが増えてきた。そしてそれを断り、声をかけていただいた日本の老舗企業に入社。そして今、2つの会社の役員と、久野塾の理事、そして自身でセミナーとビジネスコーチングというバタバタでも楽しい日々である。きっかけは沢山あるが、その中でも大きいのが久野塾にアドバイザーとして参加した事が、今にして思うと大きかった。久野塾の意欲の高い塾生と、経験豊富なアドバイザーに囲まれ、塾生のプレゼンを傾聴しプレゼンの背景を想定しながら、何かヒントになるようなアドバイスや名物?の破壊的な質問をする事がアドバイザーのミッション(笑)であるが、場への貢献を自然に考えてしまう力を久野塾は持っている。

そう、皆さんが真剣に取り組む思い、それ自体がまさに「利他」の精神、私の「利他」の精神を確実に引き出してくる。塾生のプレゼンが最初は、お題に対しての回答から、最終講に近づくにつて、より何かを伝えようとする姿に変わってくる。アドバイザーの質問も回を追うにつれ貢献のニュアンスが強く出て来る、まさに利益(りえき)の追求が、ご利益(ごりやく)の追求に自然に変わるようで、毎年アドバイザーとして参加していると「場の力」の凄みを次第に感じる。プレゼンテーションとは貢献、つまり自身が伝えたい事を聞き手に伝え、聴衆に益を与える事ではないか、伝えたい事を心を込め練りに練った言葉と身振りで伝える事で、聴衆に何らかの益を与えるようなプレゼンが良いプレゼンではないだろうか。それに挑戦する事で、久野塾の場に利益(りやく)の力を与えるような気がしている。

今、私は、久野塾の場だけにとどまらず、ビジネスシーンでも、この「感覚」を大切に、思いをのせて提案とプレゼンを練り、ソリューション提案を行っている。するとビジョンが伝わり対話が活性化され商談が進むケースが増えてきた。とかくビジネスになると利益(りえき)を上げたいという気持ちが選考し、すべてにおいて利益(りやく)を考え行動できる訳では無い。仮に商談がうまくいっても、本当に顧客に貢献できているのか、なにか不完全燃焼を感じていたのが、自然体で利益(りやく)を伝えられるケースが増え、いまでは経営課題や人生ビジョンを話し合えるお客様が増えて来た。ビジネスと人生目標がぐちゃぐちゃに混ざって来た感じがするが、これで良いのではないだろうか(笑)。

マズローの5段階欲求層の上には「超越した欲求」があるという。それってこんな感じだろうか?私にとって久野塾に参加するという事は、「立ち止まりの場」、「自然体で利益(りやく)を追求する、自然とさせられる場(笑)」、「イノベーションのアイディアが生まれる場」であり、それぞれ思いを持って参加いただく皆様が作り出す、久野塾という場のエネルギーという利益(りえき)を創造してくれる参加メンバーの皆さんに感謝の気持ちを申し上げ、皆さんと新たな世界を見てみたいと思っている。

久野塾の皆さん、これからも宜しくお願い申し上げます。

(次回は、ダイアログ塾5期生 水野龍也さん)