10月より、久野塾のリレートークをスタートします。一期生の吉田直哉さんにキックオフして頂きます。

「和の文化」について考える

個人写真
吉田 直哉(ヨシダ ナオヤ)久野塾1期生
若塾@北海道アドバイザー
株式会社ケイシイシイ

最近、ブランドについて考えるために虎屋さんの研究をしたことをきっかけに老舗の和菓子屋さんが自社の暖簾やブランド以上に、和の文化そのものを背負っている事に気づかされました。

秋のイベントでよく耳にするのは収穫祭ですが、「五穀」という米、麦、粟、きび、または稗、豆の日本人が古来より食してきた食糧を表す五穀豊穣(ごこくほうじょう)という言葉が和菓子業界では使われます。また日本で古くから使われてきた暦の二十四節気(にじゅうしせっき)をもとに、季節の移ろいを映した和菓子を楽しむ文化があります。

そんな伝統的な和菓子は、小豆、寒天など植物由来のものを原材料とする特徴を持ちますが、マクロビオテックの様に食事法としての意思があるものでなく、日本人が昔から食べていた食材なのです。

和菓子の世界の代表格である虎屋さんは400年以上前に京都で発祥し天皇家、宮中御用達の和菓子屋として、宮家と共に東京に移ってきた歴史を持ちますが、35年前にはパリで出店、ネット販売黎明期の2000年にオンラインショップを開設、近年はトラヤカフェなど、伝統を守りつつも革新することが当たり前の文化だそうです。

とらやさん以外にも、江戸の榮太樓さん、尾張の両口屋さんといった和菓子屋さんは江戸時代から暖簾、ブランドを背負いながらも事業として継続させていくために、古きよきものを守るだけでなく、革新し続けながらも和の文化をも背負っているのです。

日本は経済規模が大きく、海外のものを受け入れ易く流行に反応し易い市場であるが故外資のブランドの海外一号店となるケースが多く、例えばスターバックスは日本が海外進出一号店、ルイ・ヴィトンは1970年代の日本人の海外旅行ブームの際、パリのお店に並んで爆買いする日本人を見て、戦後の世界再進出の第一号拠点を日本にしたそうです。

そんな日本は国内、外資大手チェーンの拡大により個人店が減少し続け、今や海外から帰国した際、コンビニエンスストアの看板にほっとさせられる状況です。一方で18世紀にオープンしたローマのカフェ・グレコなどイタリアのカフェでは、今も変わらずカウンターで香りを楽しんでから砂糖がいっぱいのエスプレッソを飲み、5分程で立ち去るスタイルが生き続けることもあり、世界中に展開するスターバックスがイタリアには参入出来ていません。また、タバッキ(Tabacchi)という昔からある小規模な個人店が未だに歴史ある街並みの中でイタリア人の生活に溶け込んでいます。

このように俯瞰して見ると日本は歴史、文化があるにも関わらず海外のものを柔軟に受け入れ、欧米のものに価値を感じる傾向があることを自覚すべきだと、改めて気づきました。そして私はインバウンドという言葉がトレンドとなる中、成熟した国として中国、アジアだけでない海外の人にインスピレーションを与える存在になる可能性がある和菓子屋さんこそ、和の文化とともに日本人のスタイルとして生かしていきたいという思いが強くなりました。

2016年は、二十四節気の日めくりカレンダーで季節の移ろいを噛み締めながら過ごして参りたいと思います。

ズナイデン房子さん3 次回リレートーク ズナイデン 房子氏 (久野塾アドバイザー)です。