代表理事塾長 久野正人

【ひとり一人の試行錯誤が変革を生み出す】

昨年11月の特別編では、副塾長の鈴井さんがVUCA時代の「Un-controlable」な事象への対応として、「小さな行動」を始めることによる小さな達成感が「自己肯定感」を高め、不安が解消されていくことを語っています。この流れを受ける形で、今回の特別編では、「小さな行動」はどうやって起こすことができるかについて、久野塾(以降”塾”と記載)の実践例に触れながら、その本質に迫ってみたいと思います。

仕事であれプライベートであれ、”圧倒的に差別化できる成果“を生み出すためのシンプルな方程式があります。

(ビジョンpurpose+高画質化)X(リベラルアーツ・知識input+先鋭化)X(思考logic+言語化)X(行動 output+習慣化)=成果Outcome

塾には、社会人向けとして「ビジョン創造」と「ダイアログ」という名前の2つのスクールがあります。ビジョン創造スクールで自分の未来のなりたい姿(パーソナルビジョン)を妄想し、その解像度を高めていきます。「ぼんやりしている」或いは「今まで考えてもみなかった」自分の未来への思いの画質を徐々に高めていきます。”圧倒的な差別化できる成果”を生み出すためには、自分の強い意志(purposeやwish)が起点となるからです。

そして、ビジョンを描くことにより、リベラルアーツ・知識獲得のためのテーマを絞ることができる様になります。世の中の膨大なリベラルアーツ・知識量の中から自分に本当に必要なリベラルアーツ・知識のみを選択できたり(ビジョンに必要ないリベラルアーツ・知識に時間とエネルギーを割かない)、誰でも気軽にリベラルアーツ・知識を取得できる社会において、他人と差別化を図ることができます(幅広いリベラルアーツ・知識ではなく、ビジョンに繋がる尖ったリベラルアーツ・知識の獲得)。

一方、ダイアログスクールでは、課題図書から得られたリベラルアーツ・知識をもとにして、事前(開催の約二ケ月前)に塾生に思考を促す問いを投げかけ、問いについての自分の意見を考えてもらいます。そして、スクール本番で、考えたことを10分で発表(言語化)し、その後、参加者からの質問やコメント、フィードバック(ダイアログと呼んでます)という流れです。

例えば、2021年の第2講のテーマである「ビジョン」について、事前に投げかける問いは以下になります。

Q1.
ビジョンとは?ビジョンの定義を課題図書・参考図書その他で調べて、その本質的な意味を自分なりのビジョンの定義として言葉にしてください。
Q2.
あなたにとって、ビジョンはなぜ大切なのでしょうか?
Q3.
そのようなビジョンを見出すために、あるいはそれを見出した方はその実現のために、日々の生活(仕事の内外)にどう具体的に向き合いますか(具体的行動)?

本やネットには様々な表現で言葉の定義が書かれています。一方で、自分の持っている知識はバイアスがかかっていたり、偏りがあったり、視座が低かったりするので、良質な本やネットから良質な知識を得ること(Input)が大事です。更に、本番でのプレゼンに対する他の塾生や聴衆の敬意が込められたコメントやフィードバックからも、新たな知識を獲得できます。

さて、次のステップは、Q1Q2でその定義を「自分事化」します。自分事化とは、自分がその言葉の定義を行動に移そうとしたときに、自分の置かれた環境や状況、自分の価値観等に照らし合わせたり、行動したときの理想のイメージを想像してみることです。

そうすると、「ビジョンとは自分にとって何なのか、なぜ大切なのか、ビジョンの有無で自分の未来はどう変わるのか、今の仕事は自分のビジョンにどう繋がっているか」といった問題意識が芽生えてきます。そして、問題意識で終わらせずに、これを自分の課題に落とし込むこと。これが上記の方程式の「思考(Logic)」にあたります。

課題に落とし込む際に、押さえておきたい思考法があります。塾では特にコンセプチュアル思考とクリティカルシンキングを強く求めます。

前者は、具体的現象を抽象化・概念化させる思考法です。自分や周囲で起きている様々な現象は具体的です。その具体的現象にそのまま対処するのは対処療法です。モグラたたきの様に、後々同じ現象が再燃します。つまり、根治できていないからです。塾生の発表に対して、「それは現象か課題か?」と問われます。現象から課題をどう考えたか、と問われるわけです。根治(根本的解決)するには、本質的課題設定(仮説でもOK)が鍵になりますが、そのためには具体的現象の抽象化(WHY原因追求、メタ認知、構造化など)を考えてみて自分の言葉で語ります(言語化)。

後者は、これまでのやってきた考え方や行動を意図的に否定したうえで、新しい考え方や行動を取り入れていく思考法です。塾では、課題の準備段階で、「それは本当なのか?(検証的思考)、自分だったらどうする?(独自思考)」と自問自答し、本番で聴衆からの質問を考えしっかり言語化してもらいます。クリティカルシンキングは、視点をかえ同質性からの脱却を促し、弱点とリスクを炙り出し、最終的には意思決定のクオリティを高めることに繋がります。

さて、いよいよ行動(Output)です。ただし、思考と言語化から自動的に行動に踏み出せるわけではありません。鈴井さんが言う様に、行動は大胆に始めることは非現実的です。「大胆な行動を取れ!」と号令を掛けられても、現実は、小さな一歩がイメージできなければ、意味を成しません。小さな一歩とは自分が「具体的且つ早く」始められる行動です。上記の思考法を使って仮説設定した課題が本当に自分にとって本質的課題であるかどうかを早く検証するには、具体的な小さな一歩(塾では”実験”と呼んでます)から始めるしかないのです。

そして、実験のPDCAを高速に回し続けること(習慣化)で、自身の変化だけでなく、周囲とのかかわりの中で変わったことが体感できる様になっていきます。その小さな実験とその習慣化の結果獲得できた小さな成果・成功体験(Outcome)が、「自分の持っている知識(自己認識も含む)をベースに自分で考えて実現した!」という小さな感動体験を生み出し、小さな達成感に繋がっていきます。更に、冒頭に書きましたビジョンpurposeによって小さな実験に対する周囲の共感も得られ協力者も出現し、実験の成功率も高まること間違いなしです。

残念ながら小さな失敗体験に終わった場合でも、自分の実験と思考のルートコーズをたどって仮説まで遡って仮説を立て直し、また新たな実験にトライすれば良いのです。小さな失敗も、実は小さな成長であったと気づくはずです。

塾では、Q3の具体的行動を次回までの二ケ月間に仕事やプライベートの現場で小さく実験してきてもらい、実践知を高めてもらう様にしています(次回にその実践知を問われます)。ちなみに、「貢献します」「努力します」「コミュニケーションを改善します」等々は塾では具体的行動とは見なされず、いつまでに、誰に対して、どんなことを実験するかが問われます。

コロナパンデミックで更にVUCAの難易度が上がりました。最早、VUCAの次の時代に突入しているのかもしれません。正解のない状況から、ひとり一人が自分なりの解を見出し素早く実験する、即ち”試行錯誤の時代“です。私塾からスタートして10年、一貫して「個を磨くNew Self@Yourself」を信条としてきました。これからの10年も「自分の中に新たな自分を創っていく」変革者の輩出を目指していきたいと思います。

P.S. 社会人スクールで上記の様な学びと行動で獲得した実践知を以った塾生がコーチ陣となって中高生向けに3年前から始めた”アクシス発見スクール”が、来年4期目を迎えます。高校卒業の際に、「自分のアクシス=軸」をしっかり持って進路を自分で決めていくことをサポートしていきます。4期生の募集内容はこちらのサイトからアクセスできます。→ 中高生アクシス発見 | 久野塾 (hisanojuku.jp)