リーダーシップの旅〜学び編

iwai
岩井 睦雄 (イワイ ムツオ)
日本たばこ産業㈱
代表取締役副社長 たばこ事業本部長
日本アスペン研究所 監事
久野塾理事、アドバイザー

5年目を迎える久野塾が一般社団法人となった2016年、全国大会@萩松下村塾ツアーに触発された私は久野塾へのコミットメントを強めることになりました。理事を拝命したのと同時に、ビジョン創造スクールの立上げにも参画し、第五講を担当させていただきました。

8月のダイアログ塾では、ゲストスピーチにも登壇させていただき、「リーダーシップの旅」と題して私自身のキャリアから学んだことを特に、若い時の仕事での体験を中心に披露させていただきました。実際の仕事を通じてリーダーシップを育みキャリアを形成していくことが主筋であることは異論がないと思いますが、一方で、仕事に埋没することなく、自らをふり返り、さらなる高みへと専門性やマネジメントスキルを磨くために学び続ける機会を持てたことも、今の自分を形成する上でとても大切だったと思えます。今回は、そういった今の自分を形成した「外での学び」を紹介したいと思います。

まずはじめは、企業研究会戦略スタッフ研究フォーラムでの仲間作りです。JTが1985年に株式会社化された時、私は新設された経営企画室に配属されました。それまでの公社から、「普通の会社」として、組織のあり方、事業開発の推進、中期計画のプロセス作り、経営管理の高度化、企業ビジョン策定、組織風土改革など、経営全般にかかる様々な課題について検討する必要がありました。そんな時、このフォーラムに参加し、いろんな会社の経営企画、事業企画スタッフの方々と交流し、その時々の日本企業として共通する課題を率直に意見交換できました。そして、そこから先進的な企業の事例を深く学んだり、システムの2000年問題など、その時々で共通して悩んでいる課題についてお互いに学びあったりし、ここで汲み取った数々の提言をJTの経営陣にすることができました。その後フォーラムから離れてからも、歴代幹事団を中心に時々集まって、またその後のそれぞれの企業での課題について情報交換したりしています。2008年には、企業研究会60周年記念行事での論文応募に際し、このメンバーでいつも議論してきたことをまとめてみようと、日本発でありながら21世紀の世界に通用するビジネス倫理としての「グローバル商人道」を提言し、佳作をいただいたのもいい思い出です。今回当時のメンバーから公表の許可をいただいておりますので、資料を添付させていただきます。今でも行き過ぎた資本主義に対する一つの提言になっているように思えます。
PDFr論文
https://www.bri.or.jp/senryakustaff/

さて次は、ISL(Institute of Strategic Leadership)のSLP(Strategic Leader Program)です。そもそもISLは、興銀からハーバードビジネススクールに留学後、海外のビジネススクールで教鞭をとっていた野田智義さんが、日本が世界から取り残されていくことに強い危機感を覚え、欧米ビジネススクールを超えた、全人格的リーダー輩出するためのNPO法人として2001年に立ち上げたものです。SLPは初期のプログラムで私は二期生としてほぼ10ヶ月間、土日や数度の合宿で合計300時間ほどのプログラムを履修しました。プログラムは3部構成で、いわゆるビジネススクール的なマーケティング、戦略論、ファイナンス理論などを履修する第2部の前に、世界を知り、自己を知る、あるいはいかにそのようなことに無関心に組織内の目の前の課題にだけ囚われていることを知るための第一部があり、最後に第一部で得た知見と第二部のスキルを使って、知行合一、自ら何をやるのかを固める第三部があるというものです。ちょうど私自身シニアマネジメントになる一歩手前であり、また、JTではPlan-Vという大改革に乗り出したところでしたので、タイミングも含め私のその後の生き方に多大な影響を与えてくれました。

http://www.isl.gr.jp/index.php

三つ目は、2005年JTにとっての柱事業の一つである食品事業の事業責任者に就任した夏に受講した日本アスペン研究所、アスペンエグゼクティブセミナーです。2013年2月に久野さんに出会ったのも、このセミナーであり、それがなければ今こうやって久野塾とご縁ができることもなかったでしょう。アスペンについては、今般久野塾との相互紹介の提携をして、その方式での対話をビジョン創造塾の岩井パートでも実施していますので、詳細は割愛しますが、「価値理念を持ったリーダー」として、多くのステークホルダーへの責任を果たすために、いかに視野を広げて価値理念を考え抜くかを教えてもらいました。特に、2008年に起こったギョウザ事件の事業責任者として厳しい日々を過ごしている時に、セミナーでモデレーターとして指導いただいた今は亡き本間先生が「古典は英語ではクラッシック、これは古代ギリシャにおいて国家存亡の危機にある際に篤志家が提供した艦隊のこと。ここで読む古典は、人生の危機の際に、どのように生きるべきかを指し示してくれるだろう」という趣旨のことをおっしゃったことが、その時とても響きました。私にとって、周りの人の助けとともに、古典に触れてきたことが最後まで折れないで頑張れた心の支えになっていたように思えます。そのような縁もあり、今では、セミナーでモデレーションなどお手伝いをして、その時のご恩を少しでもお返ししたいと思っています。

http://www.aspeninstitute.jp/

最後は、コーチングです。元々は企画スタッフとして、人を束ねるよりも「こうあるべし」を理論的に組み立てていく仕事に偏っていたのですが、部下を持って仕事をするようになる中で、コミュニケーションのあり方の重要性を感じるようになりました。また、ギョウザ事件でのマスコミ対応は極端な例ですが、普段のコミュニケーションにおいても、何か本当の意味での「対話」を深めることはできないだろうかという思いが常にあり、有志でそのような対話の場の実験などもしていました。そんな中で、出会ったのがコーチングです。2009年にCTIというコーチング会社のコ・アクティブ・コーチングの基礎・応用コースに計15日間通い、その考え方、コーチングスキルを学びました。そのことは自分自身の仕事におけるコミュニケーションの改善にもなりましたし、その後マーシャル・ゴールドスミスさんとの出会いから、ビジネスコーチ社の認定コーチを取得することにもつながっています。

http://www.businesscoach.co.jp/

このように振り返って見て、仕事と研修など外との接点が、実践と振り返りのバランスとしても有用に働いていたことを実感します。また、私の場合、このような機会を自ら探索して、ある時は会社を説得して参加第一号として参加、ある時は自ら投資している点も特徴があるかもしれません。同じ研修でも、「会社の人事から行けと言われて」と言ってきている人のコミットメントと、自ら探索し、自らのリソース(時間やお金)を費やして行くのでは、得るものは全然違ってくるでしょう。そして、何にも増してこのような機会を通じて得た最大のものは、多様な人との出会いであり、その後の交流です。そんな多様な方々との交流が一見関係なさそうでいて後々仕事に役に立ったことも多々ありました。

久野塾に集う皆さまにも、大いなる学びと素敵な人との出会いがあると信じています。また、そのような場にするために、私にできることで貢献していければと思っています。今後ともよろしくお願いします。