加納千裕(カノウチヒロ)

2.5期生 ASTRA FOOD PLAN株式会社 代表取締役社長

私が久野塾でお世話になっていたのは約7年前になります。今回会社設立の報告をFacebookに投稿したところ、久野さんにお声がけいただきバトンを受け取った次第です。僭越ながらOGとしてリレートークを務めさせていただきます。

当時私は26歳。仕事で悩んでいたところ、取引先の役員である細田真也さん(久野塾2期生)に誘っていただいたのが久野塾との出会いです。「プレゼンテーションをして、講師の先生方や塾生から破壊的コメントをもらい、鍛えられる場」という前情報で連れてきてもらったのですが、正しくその通り。見学していたらワクワクが止まらなくなり、急遽申し出て私も同じテーマでプレゼンさせていただきました。

久野塾では表面をなぞるような、ふわっとしたプレゼンは許されません。テーマについて考え抜き、自分の経験や思いを盛り込んだ説得力のある内容でなければ、破壊的コメントの応酬を受けて針のむしろ必至です(笑)。ですから当然、物事に対する「考え抜く力」が身に付きました。久野塾のテーマに「個を磨く」とありますが、私が久野塾で学んだもうひとつのことは「自分と他者との違い」の認識でした。言い換えると、それが「個」そのものなのかもしれません。

プレゼンは毎回共通のテーマですが、塾生によって全く異なる内容になります。それぞれの背景、立場、性格や考え方の違いが見事に表れるのです。また、番外編のゼミでMBTI®(国際規格に基づいた性格検査。詳しくは織井さんのゼミへ!)を学んだことは、自分と異なるパーソナリティの人がここまで違う考え方をするとは…と本当に目から鱗でした。

基本的なことではあるのですが、個を磨くためにも、チーム力のためにも他者への理解は非常に重要だと気づかされました。これらの学びは今の私の礎になっています。

さて、それから7年後、紆余曲折あって2020年8月にASTRA FOOD PLAN株式会社という会社を立ち上げました。詳しい事業内容は割愛しますが、「抗酸化食品加工技術によるソリューションカンパニー」というコンセプトのもと、薬剤に頼らない安全な穀物の常温・長期保存、添加物に頼らない大量生産の食品製造が当たり前になる世界の実現を目指して、食品製造販売やコンサルティングをする会社です。父が20年以上取り組んで、実用・収益化できなかったテーマを引き継ぐ形になります。

経営者の覚悟として、今後自分の「使命」と「役割」を常に考えていこうと思っています。ミッションとポジションと言い換えることもできますが少しニュアンスが違うような気がして、しっくりくる日本語の方で考えるようにしています。

【使命】
1、使者として受けた命令。使者としての務め。
2、与えられた重大な務め。責任をもって果たさなければならない任務。

使命の意味のうち、「使者」という考え方が非常に重要と考えています。経営者とはいえ、社会的意義のある事業を遂行するための単なる使者であるという考え方があれば、謙虚な姿勢を忘れられずにいられるでしょう。また、使命感には熱意を持続させる力があります。

一方会社における「役割」は、フェーズごとに大きく変化していきます。今は少人数のスタートアップ期なので、一人で何役もこなしている状況です。従業員を増やしたとき、どのように役回りするのが会社全体にとって良いのか見極めて的確な判断ができる経営者を目指します。

この考え方は、経営者でなくてもあらゆる集団でモチベーションを保つよい方法ではないかと思います。自分の「使命」と「役割」は何か?ぜひ考えてみてください。久野塾の皆様へのギフトになれば幸いです。

最後に、久野塾で心残りだったことを果たさせてください。

こちらに掲載している写真は久野塾で「ソリューション」をテーマにプレゼンしている当時の私です(このあと歌舞伎を見に行くためたまたま着物を着ています)。「直感力」によってソリューションを行った事例を説明したのですが、「直感力には再現性がない」という破壊的コメントをいただき、打ち返すことができなかったのです。悔しかった・・・。唯一納得のいく形にできなかった回で、忘れられずにいました。

今の私であればこのように答えます。

「直感力は、日々の反復的経験で鍛えることができます。例えば料理。食材を見ただけで、パッと他の食材や調味料との新しい組み合わせが閃き、これまでにないおいしい料理ができることがあります。この直感調理法は毎日繰り返し料理している人には可能ですが、普段やらない人にはできません。同じように日々の業務の中で、小さなことでも問題点を見つけて解決していくプロセスを自身の経験として積み重ねていくことが、直感力を鍛えることにつながります」。

いかがでしょうか?何年経っても学びを与え続けてくれる久野塾に感謝です。